
看護師として退職が決まったとき、「何から手をつければいいのか分からない」「必要な手続きを忘れそうで不安」と感じる方は多いでしょう。
退職には多くの手続きが必要で、特に看護師は医療現場ならではの返却物や証明書類も関わってくるため、計画的に進める必要があります。
この記事では、看護師が退職時に行うべき手続きを時系列で整理し、必要書類やケース別の注意点も詳しく解説します。スムーズな退職と次のステップに向けて、ぜひ参考にしてください。
退職が決まったらまずやること
退職の手続きは、直属の上司への相談から始まります。
看護師の場合、まずは師長や主任に退職の意思を伝えるのが一般的です。この際、退職理由を簡潔に説明し、希望する退職日を伝えます。
口頭での相談後、正式な書面での申し出が必要になります。
一般的には退職届を提出することが多いでしょう。退職届の作成では、退職日、退職理由(「一身上の都合により」が一般的)、所属部署、氏名を明記します。
なお、退職の申し出期限は職場によって異なります。就業規則を確認して、余裕を持ったスケジュールで進めることをおすすめします。
私は退職を決めたとき、まず師長に話しました。早い段階で相談したため、師長も心づもりができて、スムーズに話が進みました。相手の立場も考えて相談すると、協力的に対応してもらえることが多いと思います。
退職前に職場に返すもの
退職の際には、職場に返すものが多くあります。返却漏れがないよう、事前にリストアップしておきましょう。
健康保険被保険者証
健康保険証は退職日の翌日に資格を失うため、最終出勤日に返却します。家族の被扶養者として加入している場合は、家族分の保険証もすべて返却が必要です。
保険証を返却した後は、国民健康保険への加入や任意継続被保険者制度の利用、新しい職場での加入など、次の健康保険の手続きが必要になります。
国民健康保険へ加入するは、事前に「健康保険資格喪失証明書」の作成依頼が必要です。空白期間ができないよう、事前に切り替え方法を決めておきましょう。
健康保険を任意で継続する場合は、健康保険証の番号を控えるかコピーを取っておきましょう。
職員証・IDカード・名札
病院やクリニックで発行される職員証、IDカード、名札なども返却します。これらは職場のセキュリティシステムと連動していることが多く、退職後に不正使用されることを防ぐため、厳格に管理されています。
電子カルテのログインIDやパスワードも、退職と同時に使用停止されるのが一般的です。最終日までに必要なデータの整理や引き継ぎを完了させておく必要があります。
制服
看護師の制服も貸与品として扱われることが多いです。制服の洗濯方法や返却時の状態について、職場の規定を確認しておきましょう。
私物と混在しがちなペンや聴診器、ナースウォッチなども、貸与品でないか確認しておきましょう。
ロッカーの鍵・入館証
ロッカーの鍵や入館証、駐車場の利用証なども忘れがちな返却物です。これらは職場のセキュリティに関わるため、紛失した場合は弁償を求められることもあります。
ロッカーの私物は計画的に持ち帰り、最終日には空の状態にしておきます。最終日に慌てないよう、少しずつ整理を進めておくことをおすすめします。
退職時にもらうべき書類
退職時には、今後の手続きに必要な書類を職場から受け取ります。退職後の保険や年金の手続き・転職活動・確定申告などで必要になるため、必ず受け取っておきましょう。
離職票
離職票は、雇用保険の失業給付を受けるために必要な書類で、ハローワークでの手続きに使用します。退職後すぐに転職する場合でも、万が一の備えとして受け取りの申請をしておくことをおすすめします。
離職票は、退職日から10〜14日後(約2週間後)に自宅に届くことが一般的です。
雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証は、雇用保険に加入していることを証明する書類です。転職先で雇用保険の手続きを行う際に必要になります。
職場を退職する日に手渡されることもありますが、離職後に源泉徴収票や離職票と一緒に送られてくるケースもあります。
源泉徴収票
源泉徴収票は、その年の1月1日から退職日までの給与や賞与、源泉徴収税額が記載された書類です。年末調整や確定申告で必要となります。
年内に転職する場合は、源泉徴収票を新しい職場へ提出しましょう。年内に転職しない場合は、自分で確定申告を行う必要があります。
年金手帳
年金手帳は、厚生年金の加入期間や基礎年金番号が記載された書類です。転職先での厚生年金加入手続きや、国民年金への切り替え手続きで必要になります。
入職時に原本ではなくコピーを提出した場合、年金手帳の返却はありません。
健康保険資格喪失証明書
健康保険資格喪失証明書は、職場の健康保険から脱退したことを証明する書類です。国民健康保険への加入手続きで必要になります。
国民健康保険への加入を検討している場合は、必ず受け取りましょう。
退職証明書
退職証明書は、退職日や勤務期間、職種などが記載された証明書です。転職活動や各種手続きで退職の事実を証明する必要がある場合に使用します。
一般的には本人が希望した場合にのみ交付される書類のため、必要な場合は事前に申し出ておきましょう。
私は退職と引っ越しが重なったので、手続きが多くとても忙しかったです。余裕を持って準備をすることが大切です!
【ケース別】退職後の手続き
退職後の手続きは、すぐに転職するかどうかによって大きく異なります。それぞれのケースに応じた適切な手続きを確認しておきましょう。
離職期間がある場合(すぐに転職しない場合)
すぐに転職しない場合は、健康保険、年金、雇用保険のすべてについて自分で手続きを行う必要があります。それぞれに期限があるため、計画的に進めましょう。
健康保険の手続き
退職後の健康保険については、主に3つの選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分の状況に最も適したものを選びましょう。
- 任意継続被保険者制度を利用する
- 国民健康保険へ加入する
- 家族の健康保険の被扶養者になる
任意継続被保険者制度は、退職前の健康保険を最大2年間継続できる制度です。退職日の翌日から20日以内に申請する必要があります。保険料は在職中の約2倍になりますが、扶養家族がいる場合や持病があって医療費が高い場合はメリットがあることが多いでしょう。
国民健康保険への加入は、退職後14日以内に住所地の市区町村役場で手続きを行います。保険料は前年の所得や住んでいる地域によって決まるため、事前に概算を確認しておくとよいでしょう。
家族の健康保険の被扶養者になるという選択肢もあります。配偶者や親の健康保険の被扶養者になれる場合は、保険料の負担がなくなるため経済的なメリットが大きいでしょう。ただし、収入制限があるため、失業給付を受ける場合は注意が必要です。
年金の手続き
厚生年金から国民年金への切り替え手続きを、退職後14日以内に住所地の市区町村役場で行います。年金手帳または基礎年金番号通知書、退職日が分かる書類(離職票など)、身分証明書、印鑑を持参しましょう。
配偶者の扶養に入る場合は、第3号被保険者への種別変更手続きを配偶者の勤務先で行います。この場合、国民年金保険料の個人負担はありません。
失業保険の申請
雇用保険の失業給付を受けるためには、住所地を管轄するハローワークで手続きを行います。
失業給付を受けるためには、「失業状態にある」「働く意思と能力がある」「積極的に求職活動を行っている」という条件を満たす必要があります。単に休息したいだけの場合は対象になりません。
給付開始には7日間の待機期間があり、自己都合退職の場合はさらに2ヶ月間の給付制限期間があります。この期間中も求職活動は継続する必要があるため、転職活動の計画を立てておきましょう。
離職期間がない場合(すぐ転職する場合)
すぐに転職する場合は、新しい職場が多くの手続きを代行してくれるため、個人で行う手続きは少なくなります。ただし、必要な書類の提出や確認事項はあるため、注意が必要です。
新しい職場での保険・年金切り替え
転職先では、健康保険と厚生年金の加入手続きが行われます。手続きは基本的に職場が代行してくれますが、必要書類の提出を求められることがあります。
退職時にもらった書類の提出
転職先では、前職での勤務状況を確認するため、各種証明書類の提出を求められることがあります。特に源泉徴収票は年末調整で必要になるため、必ず提出が必要です。
雇用保険被保険者証も、雇用保険の継続手続きのために提出を求められます。離職期間が短い場合でも、離職票の提出を求められることがあるため、受け取っておくことをおすすめします。
転職先によっては、前職の退職証明書や健康診断書の提出を求められることもあるでしょう。入職前に必要書類を確認し、準備しておくとスムーズに手続きが進みます。
直前に必要書類が揃っていないと、焦りますよね。転職が決まっている場合は、必要書類がいつ頃手に入りそうか、事前に確認しておくことをおすすめします。
円満退職のために気をつけたいポイント
退職手続きをスムーズに進めるためには、職場との良好な関係を保つことが重要です。円満退職のために気をつけたいポイントを確認しておきましょう。
就業規則の確認をしておく
退職に関する職場のルールは就業規則に記載されています。退職の申し出期限、有給休暇の取扱い、退職金の支給条件など、重要な情報が含まれているため、退職を決めたら必ず確認しましょう。
就業規則は職場の総務部や人事部で閲覧できます。最近では電子ファイルで管理している職場も多く、パソコンからアクセスできる場合もあります。分からないことがあれば、遠慮なく担当部署に質問しましょう。
特に試用期間中や勤続年数が短い場合の退職金支給条件、競業避止義務の有無、守秘義務の範囲などは重要なポイントです。これらの条件を理解した上で退職手続きを進めることで、後々のトラブルを避けることができます。
有給消化を進める
看護師の有給取得率は他の職種に比べて低い傾向にありますが、退職時には可能な限り有給休暇を消化したいものです。ただし、一度に長期間の有給を申請すると職場に迷惑をかける可能性があるため、計画的に進めることが大切です。
有給休暇の時効は2年間で、古い有給から順番に消化するのが一般的です。退職日から逆算して、どの程度の有給が消化できるか早めに計算しておきましょう。
職場によっては有給の買い取りを行っているところもありますが、法的な義務ではないため、必ずしも対応してもらえるとは限りません。有給消化が難しい場合は、買い取りの可能性について相談してみてもよいでしょう。
引き継ぎ資料を用意する
看護師の業務は患者さんの生命に関わるため、丁寧な引き継ぎが重要です。必要に応じて担当患者の情報、継続的なケアのポイント、注意すべき事項などを整理しておきましょう。
口頭での引き継ぎも重要ですが、書面で残しておくことで、後から疑問が生じた場合の参考にもなります。可能であれば、引き継ぎ後に後任者からの質問に答える期間も設けておくとよいでしょう。
最終日まで誠実に勤務する
退職が決まると気持ちが緩みがちですが、最終日まで責任を持って業務に取り組むことが大切です。最後まで気を抜かずに勤務しましょう。
同僚との関係も大切にし、感謝の気持ちを伝える機会を作ることをおすすめします。医療業界は意外と狭い世界のため、将来再び関わる可能性もあります。良い印象で退職することで、今後のキャリアにもプラスになるでしょう。
最終日には、お世話になった方々への挨拶も忘れずに行いましょう。時間に余裕があれば、ちょっとしたお菓子を用意するなど、感謝の気持ちを形に表すことも素敵です。
心のこもったメッセージカードを渡すと喜ばれます。こちらの記事も参考にしてみてくださいね!「参考記事:看護師退職時のメッセージカード|感謝を伝える例文&書き方ガイド」
退職の手続きに関するよくある質問
退職手続きでよく寄せられる質問とその回答をまとめました。困ったときの参考にしてください。
離職票がもらえない・届かないときは?
離職票は退職後10日以内に職場からハローワークに提出され、その後職場を経由して本人に交付されます。退職から3週間以上経っても届かない場合は、まず職場に確認してみましょう。
職場が手続きを忘れていたり、郵送先住所に誤りがあったりする可能性があります。職場に連絡しても解決しない場合は、直接ハローワークに相談することもできます。
また、人間関係のトラブルなどで職場に直接連絡することが困難な場合は、退職代行サービスの利用も選択肢の一つです。詳しくは「関連記事:【2025年】看護師向け退職代行サービスおすすめランキング9選!失敗しない選び方・比較・注意点」をご参照ください。
有給を使えないと言われたら?
看護師の場合、患者さんのケアに支障をきたす可能性があるため、一度に長期間の有給取得は難しいかもしれません。しかし、計画的に申請すれば取得できることが多いでしょう。
有給取得を拒否された場合は、就業規則を確認し、労働基準監督署に相談することも可能です。円満退職を目指すなら、職場と話し合いながら可能な範囲で有給を消化する方法を探してみましょう。
保険や年金の手続き、どこに相談すればいい?
健康保険については、任意継続の場合は職場で加入していた健康保険組合、国民健康保険の場合は住所地の市区町村役場が相談窓口になります。
年金については、国民年金への切り替えは市区町村役場、厚生年金に関する詳しい相談は年金事務所で対応してもらえます。ねんきんダイヤル(0570-05-1165)でも電話相談が可能です。
失業保険については、住所地を管轄するハローワークが窓口になります。初回の相談時に詳しい説明を受けられるため、分からないことがあれば遠慮なく質問しましょう。
一人で悩まず、専門の窓口に相談するのが一番確実だと思います。必要書類を事前に確認して持参すると、手続きもスムーズでした。
まとめ
看護師の退職では、多くの書類や手続きが必要になりますが、段階的に進めれば決して難しいものではありません。
退職前には職場への返却物を整理し、退職時には必要な証明書類をすべて受け取りましょう。
また退職後の手続きは、すぐに転職するかどうかで大きく異なるため、自分の状況に応じた適切な手続きを選択することが大切です。
手続きをスムーズに済ませることで、次のキャリアステップに向けて前向きに進むことができるでしょう。看護師としての経験を活かし、新しい環境でのさらなる成長を目指してくださいね。
退職手続きは最初は大変そうに思えましたが、一つずつクリアしていけば意外と大丈夫でした。分からないことは、関連の窓口に素直に聞くのが一番です!
Wrote this article この記事を書いた人

ぽー
看護師・保健師・養護教諭資格あり。 転職経験は3回で、現在はフリーランスとして活動中です。急性期から退院支援、外来などさまざまな部署で看護の仕事をしてきました。 子育てと仕事との両立に悩み、ライフステージの変化に応じて働き方を変えていった経緯があります。 働き方に悩む看護師が、より自分らしく働くために役立つ情報を発信していきます。