
「退職を考えているけど、違約金を請求されるって聞いて不安…」
「お礼奉公中に辞めたら本当にお金を払わないといけないの?」
このような悩みを抱える看護師さんは、実は多いのが現実です。特に奨学金を受けて就職した方や、入職時に特別な契約を結んだ方にとって、違約金の問題は退職への壁となっています。
しかし、すべての違約金が法的に有効というわけではありません。むしろ、違約金の請求は違法とされる可能性が高いのです。
この記事では、看護師の違約金について、病院側から請求された場合の対処法をお伝えします。一人で悩まず、正しい知識を身につけて安心して次のステップに進みましょう。
そもそも「看護師の違約金」ってなに?
看護師が退職時に直面する「違約金」とは、主に病院や医療機関が労働契約や奨学金制度に基づいて請求する金銭的な負担のことです。
多くの看護師さんが「契約で決まっているから仕方ない」と諦めてしまいがちですが、実際にはその多くが法的に問題があるケースなのです。
違約金が発生する代表的なケース
看護師の違約金が請求される主なパターンには、以下のようなものがあります。
奨学金(お礼奉公)を途中で辞退する場合
最も多いのが、病院独自の奨学金制度を利用した看護師が、約束した勤務期間を満了せずに退職するケースです。
「3年間勤務すれば返済免除」といった条件で奨学金を受けた場合、途中で退職すると全額または一部の返還を求められることがあります。
雇用契約に違約金条項がある場合
一部の病院では、雇用契約書に「○年以内に退職した場合は○万円の違約金を支払う」といった条項を盛り込んでいることがあります。
入職時に慌ただしく契約書にサインしてしまい、後から気づくケースも考えられます。
入職後すぐに辞める場合(研修費返還など)
新人研修費用や資格取得支援費用などの名目で、「○ヶ月以内に退職した場合は研修費○万円を返還」という契約になっているケースもあります。
よくある契約内容の例
実際の契約でよく見られる違約金条項には、次のようなものがあります。
「3年間勤務しなければ奨学金200万円を一括返済」「1年以内の退職の場合は研修費50万円を返還」「退職時は6ヶ月前までに申告、違反した場合は違約金30万円」
これらの条項を見ると、確かに「契約だから従わなければ」と思ってしまうかもしれません。しかし、法律上はこれらの多くが無効とされる可能性が高いのです。
退職を考える前に知っておきたい基本的な情報については、「看護師が退職を決める前に知っておくべき5つのこと」も参考にしてみてください。
違約金は法的に「必ず払わなきゃいけない」の?
看護師の退職時に請求される違約金の多くは、法的に支払う義務がないケースも多くあります。
違約金=すべて合法ではない(無効の可能性も)
「契約書に書いてあるから」「サインしたから」といって、すべての違約金が法的に有効というわけではありません。
労働基準法では、労働者の退職の自由を強く保護しており、それを制限するような契約条項は原則として無効とされています。
つまり、あなたが「違約金を払わなければならない」と思い込んでいる契約が、実は法的に意味をなさない可能性が高いのです。
労働基準法では「違約金を定めてはいけない」とされている
労働基準法第16条には、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と明記されています。
つまり、法律上、退職を理由とした違約金の設定そのものが禁止されているのです。
労働基準監督署には、退職時の違約金に関する相談が寄せられることがあり、多くの場合で労働基準法違反の可能性が指摘されています。
判例・ガイドラインで違法とされたケースも
実際の裁判においても、看護師の退職時違約金に関する多くの事例で、病院側の請求が「公序良俗違反」として無効とされています。
特に、金額が不当に高額である場合や、退職の自由を過度に制限している場合には、裁判所は違約金条項を無効と判断する傾向があります。
労働基準法の趣旨からも、退職を制限するような契約は労働者の権利を侵害するものとして問題視されています。
辞めたくても辞めさせてもらえない時は?
違約金の問題以外にも、「辞めさせてもらえない」という状況に直面している看護師さんも多いでしょう。しかし、これについても法律ははっきりと労働者の権利を守っています。
退職は「2週間前の意思表示」で法律上OK
民法第627条により、労働者は2週間前に退職の意思を表示すれば、使用者の同意がなくても退職することができます。
つまり、病院側が「人手不足だから辞められない」「引き継ぎが終わるまで待って」と言っても、法的には2週間後には退職が成立するのです。これは看護師であっても例外ではありません。
引き止めや嫌がらせはパワハラの可能性も
退職の意思を伝えた後に、上司や同僚から以下のような対応を受けた場合は、職場でのパワーハラスメントに当たる恐れがあります。
- 「無責任だ」「患者さんはどうするの」といった人格を否定するような発言
- 退職届を受け取らない、シフトから外されるなど嫌がらせ的な扱い
- 「損害賠償を請求する」などの脅し など
このような不当な扱いを受けても、決して我慢する必要はありません。退職は労働者の正当な権利であり、それを妨害する行為は適切ではないのです。
退職時のトラブル全般については、「看護師が退職でトラブルに巻き込まれたら?引き止め・嫌がらせの対処法」で詳しく解説しています。
辞めさせてもらえない=違法な可能性あり
使用者が労働者の退職を不当に妨げる行為は、労働基準法違反に該当する可能性があります。
特に、脅しや圧力によって退職を阻止しようとする行為は明確に違法です。もしこのような状況に置かれた場合は、労働基準監督署への相談を検討しましょう。
一人で抱え込まず、専門機関のサポートを受けることが大切です。
師長から「あなたが辞めたら周りに迷惑がかかる」と言われ、半年以上退職を先延ばしにしてしまった経験があります。自分の権利をもっと早く知っておけばよかったなと思います。
違約金トラブルを避けるためのポイント
違約金に関するトラブルを避け、スムーズに退職するためには、適切な準備と対応が重要です。
契約書・誓約書を確認しよう
まずは手元にある契約書や誓約書を改めて確認してみましょう。違約金条項がある場合は、その具体的な内容を把握することが第一歩です。
確認すべきポイントは以下の通りです。
- 違約金の具体的な金額
- 適用される条件(勤務期間、退職理由など)
- 支払い時期や方法
- その他の制限条項
多くの場合、契約書の文言は曖昧で理解しにくい場合があります。不明な点があれば、無理に解釈せず専門家に相談することをお勧めします。
退職時に必要な手続きについては、「退職時にやるべき手続きと書類・退職理由別の注意点」で詳しく説明しています。
内容が不明・不安な場合は専門家に相談を
契約内容について疑問がある場合や、違約金の請求を受けた場合は、専門機関に相談できます。
労働基準監督署では無料で相談を受け付けており、法律上の権利について詳しく教えてもらえます。都道府県の労働局にも総合労働相談コーナーがあり、専門の相談員が対応してくれます。
また、弁護士に相談することで、より具体的で専門的なアドバイスを受けることも可能です。初回相談無料の弁護士事務所も多いので、一度話を聞いてもらうだけでも安心につながるでしょう。
感情的に動かず、冷静に対処することが大切
違約金の話が出ると、つい感情的になってしまいがちですが、冷静な対応を心がけましょう。
感情的になると、相手の言いなりになってしまったり、逆に関係が悪化したりする可能性があります。法的な根拠を理解した上で、淡々と対応することが最も効果的です。
また、やり取りの記録を残しておくことも重要です。電話での会話は録音が難しい場合もあるので、重要な内容については後日メールで確認を取るなど、証拠を残す工夫をしましょう。
どうしても不安なときは「退職代行」や「弁護士」も視野に
自分一人では対処が難しい場合や、精神的な負担が大きい場合は、プロのサポートを受けることも有効な選択肢です。
退職代行なら「即日退職」も可能
退職代行サービスは、あなたに代わって退職の意思を会社に伝えてくれるサービスです。
特に看護師の場合、人手不足を理由とした強い引き止めや、違約金を理由とした脅しを受けることも多いため、第三者が介入することで状況が改善される場合があります。
退職代行を利用することで、直接的な対立を避けながら、法的に適切な形で退職手続きを進めることができます。また、労働組合が運営する退職代行サービスであれば、違約金の交渉についても対応してもらえる場合があります。
退職代行について詳しく知りたい方は、「看護師向け退職代行サービスおすすめランキング」を参考にしてみてください。
法律のプロに相談することでリスクを最小限に
弁護士に依頼する場合は、より専門的で強力なサポートを受けることができます。
弁護士であれば、違約金条項の法的有効性を詳しく検討し、病院側との交渉も代理で行ってくれます。また、万が一訴訟に発展した場合も、一貫してサポートを受けることができるため、安心感があります。
看護師の労働問題に詳しい弁護士であれば、医療業界特有の慣習や問題点についても深く理解しているため、より的確なアドバイスを受けることができるでしょう。
まとめ|看護師の違約金は「払わないといけない」とは限らない!
看護師の退職時に請求される違約金は、法的に支払う義務がないケースも多くあります。
まず大切なのは、「契約書に書いてあるから仕方ない」と諦めないことです。労働基準法により、退職を制限する違約金の設定は禁止されており、多くの違約金条項が無効とされる可能性があります。
もし違約金の請求を受けたり、退職を阻止されたりした場合は、一人で悩まず専門家に相談することをお勧めします。
労働基準監督署、労働局、弁護士、退職代行サービスなど、あなたを支援してくれる制度や専門家は数多く存在します。
看護師という仕事に誇りを持ちながらも、不当な扱いを受ける必要はありません。正しい知識を身につけ、必要に応じてプロのサポートを活用して、あなた自身にとって最適な働き方を見つけていきましょう。
あなたの健康と将来を最優先に考えて、勇気を出して一歩を踏み出してくださいね。
参照元:労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等) |厚生労働省
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Wrote this article この記事を書いた人

ぽー
看護師・保健師・養護教諭資格あり。 転職経験は3回で、現在はフリーランスとして活動中です。急性期から退院支援、外来などさまざまな部署で看護の仕事をしてきました。 子育てと仕事との両立に悩み、ライフステージの変化に応じて働き方を変えていった経緯があります。 働き方に悩む看護師が、より自分らしく働くために役立つ情報を発信していきます。