看護師1年目で退職しても大丈夫?後悔しない判断軸とその後の選択肢

看護師1年目で退職しても大丈夫?後悔しない判断軸とその後の選択肢
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看護師として働き始めて1年未満で「もう辞めたい」と感じていませんか?

夜勤のつらさ、人間関係のストレス、理想と現実のギャップに悩み、「1年目で辞めるなんて甘えなのかな」「周りに何と思われるだろう」と不安になる気持ち、よく分かります。

実は、看護師1年目での退職は決して珍しいことではありません。

この記事では、1年目で退職を考える理由や、その後の選択肢、実際に退職して良かったと感じている人の体験談をご紹介します。あなたの人生はあなたが決めていいのです。

看護師1年目で退職してもいい?考えるべき3つの視点

「1年目で辞めるのは甘えじゃないか」「もう少し頑張るべきでは」と自分を責めてしまう方も多いでしょう。

退職を考えるかどうかは、以下の3つの視点から冷静に判断することが大切です。

①心と身体の健康を守る視点

最も重要なのは、あなたの心と身体の健康です。

看護師の仕事は責任が重く、ストレスも多い職業です。睡眠不足が続く、食欲がない、気分が落ち込む、仕事のことを考えると不安になるなどの症状が続いている場合は、心身からのSOSかもしれません。

日本看護協会の調査によると、2024年度の看護師の離職率は年間約11.3%で、特に新卒看護師の離職率は8.8%となっています。
つまり、10人に1人近くが1年以内に退職している計算になります。あなただけが特別弱いわけではないのです。

無理を続けて心身の健康を損なってしまえば、看護師として復帰することも、他の仕事に就くことも困難になる可能性があります。「今は辞めて休息を取る」という選択も、長い人生を考えれば賢明な判断と言えるでしょう。

②キャリア形成の視点

「1年で辞めたら経歴に傷がつく」と心配する方もいるでしょう。確かに短期間での退職は転職活動で説明が必要になりますが、決して致命的ではありません。

看護師は慢性的に人手不足の職種であり、1年目であっても基本的な看護技術や知識は身についているため、転職先は見つかることが多いです。特にクリニックや介護施設、美容クリニックなどでは、1年目での転職者も歓迎される傾向があります。

また、今の職場が合わないからといって、看護師という職業自体が向いていないわけではありません。職場環境や働き方を変えることで、看護師としてのやりがいを見つけられる可能性は十分にあります。

③ライフスタイル・価値観の視点

看護師として働く中で、自分が大切にしたい価値観やライフスタイルが明確になることもあります。

  • 患者さんとじっくり向き合いたい
  • 夜勤のない規則正しい生活をしたい
  • プライベートも充実させたい

このような希望は、決してわがままではありません。

20代前半という人生の重要な時期に、自分に合わない環境で我慢し続ける必要はありません。むしろ、早めに自分の価値観に合った環境を見つけることで、より充実したキャリアを築ける可能性があります。

1年目の看護師が退職する理由

看護師1年目で退職を考える理由は様々ですが、多くの新人看護師が共通して悩むポイントがあります。自分だけではないと知ることで、少し気持ちが楽になるかもしれません。

人間関係のストレス(先輩・上司との関係)

新人看護師にとって最も大きなストレス要因の一つが人間関係です。

指導が厳しすぎる先輩、理不尽に怒る上司、同期との競争など、人間関係に疲れてしまうケースは非常に多いです。特に看護の現場では「患者さんの命に関わる」という理由で、厳しい指導が当たり前とされる風潮があります。

しかし、パワハラに近い指導や、人格否定的な言葉を受け続ける必要はありません。良好な人間関係の中で成長できる職場は必ずあります。

教育体制や指導方法が合わない

新人教育の方法は病院によって大きく異なります。マンツーマンで丁寧に指導してくれる職場もあれば、「見て覚えろ」というスタイルの職場も。

自分の学習スタイルに合わない指導方法では、なかなか成長を実感できず、自信を失ってしまうことがあります。

また、「質問しにくい雰囲気」「忙しすぎて指導を受ける時間がない」といった環境では、不安を抱えたまま業務を行うことになり、ストレスが蓄積されていきます。

夜勤・不規則な勤務で体調を崩した

看護学校時代には経験のない夜勤勤務は、想像以上に体への負担が大きいものです。

生活リズムが崩れ、食事も不規則になりがちです。若いからといって無理が利くわけではなく、体質的に夜勤が合わない人もいます。

慢性的な睡眠不足により、集中力の低下や判断力の鈍化を感じる場合は、患者さんの安全にも関わる重要な問題です。無理を続けるよりも、日勤のみの職場を選ぶという判断も必要でしょう。

ぽー

ぽー

私は夜勤が合わず、3年ほどで夜勤のある生活を断念しました。日勤のみの勤務に変えてもらってからはかなり体が楽に。最終的に、自分のことを守れるのは自分です。

看護技術や知識に自信が持てない

1年目はまだまだ覚えることが多く、「自分にできるのだろうか」と不安になることは当然です。特に急性期病棟では高度な医療技術が求められ、プレッシャーを感じる場面も多いでしょう。

「他の同期はできているのに自分だけできない」と比較してしまったり、「患者さんに迷惑をかけているのでは」と不安になったりすることもあります。

しかし、成長のペースは人それぞれであり、今の職場が自分の成長に適していない可能性もあります。

理想とのギャップ

看護学校時代に描いていた理想と、実際の現場での仕事内容にギャップを感じることも多いです。

「患者さんとじっくり向き合いたかったのに、業務に追われて話す時間がない」「もっと医療的なケアがしたかったのに、雑務が多い」といった声をよく聞きます。

また、チーム医療への憧れがあったのに、実際は職種間の連携がうまくいっていなかったり、医師との関係性に悩んだりすることもあります。

理想と現実のギャップは、モチベーションの低下につながりやすい要因です。

責任の重さに耐えられない

人の命を預かる仕事という責任の重さは、実際に働いてみて初めて実感することが多いです。「自分のミスで患者さんに何かあったら」という不安が常につきまとい、精神的な負担が大きくなることがあります。

特に急変対応や急性期医療の現場では、一瞬の判断が患者さんの生命に直結することもあり、そのプレッシャーに押しつぶされそうになる新人看護師も少なくありません。

精神的に限界

仕事の責任の重さや人間関係、夜勤の過酷さなど、さまざまなことが重なり、うつ状態になったり強い不安感を抱えたりする新人看護師もいます。

「朝起きるのがつらい」「職場に向かう足取りが重い」「休日も仕事のことが頭から離れない」といった症状が続く場合は、専門医に相談することも大切です。

心の健康を損なってしまっては、看護師として働き続けることも、患者さんに良いケアを提供することもできません。早めのケアと環境の見直しが必要です。

プライベートの変化

入職後にプライベートに大きな変化があることもあります。結婚、家族の介護、パートナーの転勤などにより、今の職場で働き続けることが困難になるケースもあります。

人生には様々な転機があり、その時々で最適な選択をすることは自然なことです。ライフステージの変化に合わせて働き方を見直すことは、決して逃げることではありません。

ぽー

ぽー

私の同期も半分近くが1年目〜2年目に退職しました。理由は本当に人それぞれです。みんなそれぞれの道で頑張っていて、「辞めたから不幸」なんてことは全然ありません。

退職後の転職先や進路の選択肢

看護師1年目で退職しても、その後の選択肢はたくさんあります。病院以外にも看護師の資格を活かせる職場は多く、自分に合った環境を見つけることができるでしょう。

クリニック勤務

クリニック勤務は、夜勤がなく規則正しい生活を送れることが最大のメリットです。外来診療がメインとなるため、急変対応は少なく、比較的落ち着いた環境で働けます。

患者さんとのコミュニケーションを大切にできるクリニックも多く、「じっくりと患者さんと向き合いたい」という看護師には向いている職場です。

内科、小児科、皮膚科、整形外科など、様々な診療科のクリニックがあるため、自分の興味のある分野を選ぶことができます。

病院勤務と比べると給与は下がることが多いですが、ワークライフバランスを重視したい方には理想的な職場と言えるでしょう。

美容クリニック

美容クリニックは、患者さんの美容や健康をサポートする仕事です。接客スキルやコミュニケーション能力が重視され、「ありがとう」と感謝される機会も多い職場です。

美容に興味がある方にとっては、最新の美容医療技術を学べる貴重な機会でもあります。給与水準も比較的高く、インセンティブ制度があるクリニックも多いです。

ただし、自費診療が中心となるため、営業的な側面もあることは理解しておく必要があります。

訪問看護

訪問看護は、利用者の自宅を訪問してケアを提供する仕事です。一人ひとりの患者さんとじっくり向き合うことができ、生活に密着したケアを提供できます。

スケジュール管理がしやすく、夜勤がないことも魅力の一つです。在宅医療への関心が高まる中、今後ますます需要が増える分野でもあります。

車の運転が必要な場合が多いことや、一人で判断しなければならない場面があることは考慮すべき点ですが、看護の本質を感じられる職場として人気があります。

介護施設

特別養護老人ホームやデイサービスなどの介護施設では、医療行為よりも日常生活の支援がメインとなります。高度な医療技術は求められないため、1年目の看護師でも働きやすい環境です。

利用者の方々との温かい交流があり、「ありがとう」の言葉をたくさんもらえる職場でもあります。夜勤がない施設も多く、プライベートとの両立もしやすいでしょう。

高齢化社会の進展とともに、介護施設での看護師の役割も重要性を増しています。

健診センター

健診センターでは、健康診断や人間ドックの実施をサポートします。病気の治療ではなく、予防医療に関わることができる職場です。

業務内容は比較的ルーティン化されており、急変対応はほとんどありません。予約制で進行するため、時間に追われることも少なく、精神的な負担が軽いのが特徴です。

健康な方を対象とするため、明るい雰囲気の職場が多く、ストレスを感じにくい環境と言えるでしょう。

産業看護師・保健師

企業の健康管理室や学校の保健室で働く選択肢もあります。従業員や学生の健康管理、健康相談、健康診断の管理などが主な業務となります。

一般的に土日祝日が休みで、福利厚生も充実していることが多いです。医療行為は少なく、相談業務やデスクワークが中心となるため、体力的な負担も軽減されます。

保健師の資格が必要な場合もありますが、看護師資格のみで応募できる職場もあります。

看護以外の職種

看護師の経験を活かして、医療関連企業や保険会社で働く道もあります。医療機器メーカーの営業職、保険会社の医療保険部門、治験コーディネーターなど、様々な選択肢があります。

また、看護とは全く異なる分野に進むことも可能です。若いうちであれば、新しい分野へのチャレンジも十分に可能でしょう。看護師として身につけたコミュニケーション能力や責任感は、どの職種でも活かすことができます。

ぽー

ぽー

私は病院を退職した後、市町村の子育て支援センターで働いています。病院とは全然違う雰囲気で、看護師の働く場所は本当にたくさんあるんだと実感しています。

1年目で退職して「よかった」と思えるケース

実際に1年目で退職した看護師の中には、「辞めて良かった」と振り返る方も多くいます。どのようなケースで満足度の高い選択となったのでしょうか。私の周りの看護師の事例を紹介します。

これらの事例に共通するのは、「自分の価値観や体調と向き合い、それに合った選択をした」ということです。周囲の期待や一般的な常識に惑わされず、自分にとって最良の道を選ぶことの大切さが分かります。

自分に合った職場を見つけて笑顔で働けるようになった

急性期病棟でのハードな勤務に疲れ果てていたAさんは、退職後、地域のクリニックに転職しました。夜勤がなくなり、患者さんとゆっくり話せる環境で、改めて看護の喜びを感じられるようになりました。

同じ看護師という職業でも、職場環境によってやりがいに大きな違いが出ることがあります。自分に合った環境を見つけることの大切さを示すケースです。

看護以外の道に進み新しいやりがいを見つけた

看護師としての適性に疑問を感じていたBさんは、1年目で退職後、養護教諭の資格を取得し、学校に転職しました。看護師としての経験があることで、職員からの信頼も厚く、楽しそうに仕事をしています。

看護師の資格や経験は、様々な分野で活かすことができる貴重な財産といえます

心身の不調が回復し、自分のペースで働ける環境を得た

夜勤や人間関係のストレスで体調を崩していたCさんは、1年目で退職後、しばらく休養を取りました。その後、学生時代からお付き合いしていた人と結婚し、転居。転居先で看護師の仕事に復帰し、今は自分に合った職場で楽しく働いています。

一時的に休息を取ることで、長期的には看護師としてのキャリアを継続できるケースもあります。

看護師1年目の退職に関するQ&A

1年目での退職について、よくある疑問にお答えします。

1年目でも退職金はもらえるの?

退職金制度は職場によって異なりますが、多くの場合、勤続年数が短いと退職金は支給されないか、あったとしても少額です。

就業規則に退職金の支給条件が明記されているため、必ず確認しましょう。一般的には勤続3年以上で退職金が支給されることが多いです。

退職金がもらえないことを理由に、無理して仕事を続ける必要はありません。長期的な健康や幸福度を考えれば、退職金よりも大切なものがあります。

退職金について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。「参考記事:看護師の退職金の平均はいくら?5年・10年・定年など勤務年数による相場や計算方法を解説

履歴書や面接で退職理由はどう伝える?

1年目での退職理由を伝える際は、ネガティブな表現を避け、前向きな理由として説明することが大切です。以下のような表現が効果的です。

  • より専門性を高めたいと考え、〇〇分野に特化した環境で経験を積みたいと思いました
  • 患者さんとじっくり向き合えるケアがしたく、〇〇の職場を志望いたします

前職の愚痴や批判は避け、「学んだこと」「成長したいこと」を中心に話すと好印象を与えられます。

辞めるとき上司や親にどう切り出す?

まずは直属の上司(師長など)に相談しましょう。感情的にならず、冷静に退職理由と希望退職日を伝えます。「よく考えた上での決断です」という姿勢を示すことが大切です。

親への報告は、退職理由と今後の計画を整理してから行いましょう。「看護師を辞める」=「失敗」ではないことを説明し、新しいキャリアプランを示すと理解を得やすくなります。

どちらの場合も、感謝の気持ちを忘れずに伝えることで、円満な関係を保てます。

なお、人間関係のトラブルやパワハラなどで直接退職を伝えることが困難な場合は、退職代行サービスの利用も選択肢の一つです。詳しくは「関連記事:【2025年】看護師向け退職代行サービスおすすめランキング9選!失敗しない選び方・比較・注意点」をご参照ください。

失業保険は受け取れるの?手続きは?

雇用保険に加入していれば、1年目でも失業保険を受け取ることができます。ただし、自己都合退職の場合は給付制限期間(2ヶ月間)があります。

手続きはハローワークで行い、離職票などの必要書類を提出します。給付を受けるためには、積極的な求職活動が求められるため、転職活動と並行して進めることになります。

失業保険の給付期間は勤続年数によって決まりますが、1年未満の場合は90日間となります。この期間を有効活用して、じっくりと次のキャリアを考えることができます。

【まとめ】あなたの人生、あなたが決めていい

看護師1年目での退職は、決して珍しいことでも、恥ずかしいことでもありません。大切なのは、周囲の期待や一般的な「べき論」ではなく、あなた自身の心と体の声に耳を傾けることです。

無理を続けて心身の健康を損なってしまえば、看護師として働き続けることも、他の道に進むことも困難になってしまいます。今立ち止まって考えることは、逃げることではなく、自分の人生を大切にする賢明な判断です。

看護師としてのキャリアを続けるにしても、別の道に進むにしても、あなたには無限の可能性があります。1年目で身につけた看護の知識や技術、コミュニケーション能力は、どの道を選んでも必ず活かすことができる貴重な財産です。

周りの声に惑わされず、自分の気持ちに正直に、次の一歩を踏み出してください。

ぽー

ぽー

悩んでいる皆さんも、自分の気持ちを大切に、後悔のない選択をしてほしいと思います。どんな道を選んでも、きっと素敵な未来が待っています。

Wrote this article この記事を書いた人

ぽー

ぽー

看護師・保健師・養護教諭資格あり。 転職経験は3回で、現在はフリーランスとして活動中です。急性期から退院支援、外来などさまざまな部署で看護の仕事をしてきました。 子育てと仕事との両立に悩み、ライフステージの変化に応じて働き方を変えていった経緯があります。 働き方に悩む看護師が、より自分らしく働くために役立つ情報を発信していきます。

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