
「もう、明日から会社に行きたくない…」「上司に退職を伝えることを考えると、胃が痛くなる…」 そんな風に、退職に関する大きな悩みやストレスを抱えている方にとって、退職代行サービスは非常に魅力的な選択肢に映るでしょう。
面倒な手続きや気まずい交渉を全て代行してもらい、精神的な負担なくスムーズに、時には即日で退職できるというのは、まさに救世主のような存在かもしれません。
しかし、その手軽さや利便性の裏には、事前にしっかりと理解しておくべきデメリットや注意点も確かに存在します。
サービス内容をよく確認せずに安易に利用してしまったり、自分の状況に合わない業者を選んでしまったりすると、「こんなはずじゃなかったのに…」「もっと慎重になるべきだった…」と後悔する結果につながる可能性も否定できません。
安心して新しい一歩を踏み出すためには、メリットだけに目を向けるのではなく、潜在的なリスクや問題点を事前に把握しておくことが不可欠です。
そこでこの記事では、退職代行サービスを利用する際に考えられる「7つの主なデメリット」を具体的に掘り下げて解説します。さらに、それらのデメリットを可能な限り回避・軽減し、後悔することなくサービスを賢く活用するための「具体的な注意点と対策」を詳しくお伝えしていきます。
そもそも、なぜ退職代行サービスが注目されるのか?
本格的にデメリットを検討する前に、そもそもなぜこれほどまでに多くの方が退職代行サービスの利用を考え、実際に注目を集めているのか、その主な魅力を簡単におさらいしておきましょう。
これらのメリットを再確認することで、後ほど詳しく解説するデメリットとの比較検討がしやすくなり、よりバランスの取れた判断ができるはずです。
退職代行サービスが選ばれる最大の理由は、やはり「精神的な負担を大幅に軽減できる」という点に尽きるでしょう。通常、退職を願い出る際には、上司に伝える際の気まずさ、理由を問いただされることへのプレッシャー、同僚への申し訳なさなど、様々なストレスが伴います。
退職代行サービスを利用すれば、こうした精神的な重圧から解放され、業者によっては依頼後は一切会社側と直接連絡を取る必要がなくなります。つまり、「上司や社長と顔を合わせることなく、気まずい思いをせずに辞められる」のです。
また、特に人手不足が深刻な職場や、体育会系の風土が残る会社でありがちな「強い引き止めや威圧的な説得に合わない」という点も大きなメリットです。業者が第三者として間に入ることで、こうした直接的なプレッシャーや煩わしい交渉を回避し、よりスムーズかつ確実に退職手続きを進めることが期待できます。
さらに、業者や状況によっては「即日退職の可能性」も魅力の一つです。これは、法的な退職の効力発生日とは別に、実質的に「依頼した翌日から出社しない」という形での退職が実現できるケースを指します。「もう一日も今の職場にはいたくない」「心身ともに限界だ」という切羽詰まった状況の方にとっては、非常に心強い選択肢となっているのです。
これらの点が、退職代行サービスが困難な状況にある多くの方々にとって、有効な手段として注目されている主な理由と言えるでしょう。しかし、これらの魅力的なメリットの裏側には、どのようなデメリットが潜んでいるのでしょうか。次章から詳しく見ていきましょう。
退職代行サービスの主なデメリット7選|使う前に知っておくべきこと
退職代行サービスは、退職の意思を伝えにくい方にとって心強い味方となりますが、利用する前にはいくつかのデメリットや注意点を理解しておくことが、後悔を避けるために非常に重要です。
ここでは、主なデメリットとして考えられる7つのポイントを、その解説と具体例とともに詳しく見ていきましょう。
- 費用が発生する(無料ではない)
- 悪質な業者を選んでしまうリスク
- 職場との関係が悪化する可能性
- 希望通りの条件で退職できない場合がある
- 退職後の手続きで手間取ることがある
- 周囲(家族・同僚・次の職場など)への影響・後ろめたさ
- 自分に本当に合ったサービスか見極めが難しい

デメリット①:費用が発生する(無料ではない)
当然のことながら、退職代行サービスはボランティアではありません。利用するには、数万円単位の費用がかかります。退職を考えている状況では、経済的に余裕がない場合も多く、この費用が大きな負担となる可能性があります。
一般的な退職代行サービスの料金相場は、民間企業や労働組合が運営するもので2万円~3万円程度、弁護士が運営するものでは5万円以上、交渉内容によってはさらに高額になることもあります。この費用を支払ってでも利用する価値があるのか、慎重な判断が必要です。
デメリット②:悪質な業者を選んでしまうリスク
退職代行サービスの需要の高まりとともに、残念ながら実績の乏しい業者や、中には非弁行為(弁護士資格がないのに法律事務を行うこと)を行うような違法な業者、あるいは詐欺まがいの悪質な業者も存在します。見極めを誤ると、お金だけ取られて何もしてくれない、といった最悪の事態も考えられます。
「格安」を謳う業者に料金を振り込んだものの、その後一切連絡が途絶えてしまったり、会社へ退職の意思を伝えてくれなかったりするケース。また、民間業者なのに「未払い残業代を交渉します」などと違法な営業を行うケースも報告されています。
デメリット③:職場との関係が悪化する可能性がある
退職代行サービスを利用するということは、会社側から見れば「本人から直接ではなく、第三者を通じて一方的に退職を告げられた」と受け取られる可能性があります。これにより、これまで良好だったかもしれない元上司や同僚との関係が悪化し、いわゆる「円満退職」とは程遠い形になることも少なくありません。
十分な引継ぎが行われないまま退職となることへの不満や、直接話し合う機会を設けなかったことに対する「裏切り行為」と捉えられ、感情的なしこりが残るケース。特に小規模な職場や、人間関係が密な職場では影響が出やすいかもしれません。
デメリット④:希望通りの条件で退職できない場合がある
「有給休暇を全て消化したい」「〇月〇日に辞めたい」といった希望を退職代行業者に伝えても、それらが100%実現するとは限りません。特に、民間企業の退職代行サービスの場合、法的な交渉権がないため、あくまで会社側に「お願い」や「要望」を伝えることしかできません。会社側の就業規則や繁忙期の状況、人員体制などによっては、希望が通らないこともあります。
希望退職日を伝えたものの、会社側から「繁忙期のため、あと1ヶ月は勤務してほしい」と強めに要求され、業者が交渉できずに結局退職日が延びてしまうケース。あるいは、有給消化を申請しても、「引継ぎ期間を考慮すると認められない」と拒否されるケースなどです。
デメリット⑤:退職後の手続きで手間取ることがある
退職代行サービスは、あくまで「退職の意思を伝え、退職を成立させる」ことが主な業務です。離職票や源泉徴収票といった退職後の重要書類の発行手続き、会社への貸与物の返却などで、業者によっては十分なフォローがない場合があります。結果として、退職後に自分で会社と直接やり取りをする必要が生じ、気まずい思いをしたり、手続きがスムーズに進まなかったりする可能性があります。
退職はできたものの、離職票がなかなか送られてこず、失業保険の申請が遅れてしまうケース。業者が「書類請求はサポート範囲外」として対応してくれず、結局自分で人事に連絡を取らなければならなかった、などです。
デメリット⑥:周囲(家族・同僚・次の職場など)への影響・後ろめたさ
退職代行サービスを利用することに対して、個人的な罪悪感や「普通ではない辞め方をしてしまった」という後ろめたさを感じる人もいます。また、家族や親しい友人から「なぜ直接言えなかったのか」と心配されたり、理解を得られなかったりすることも考えられます。
さらに、転職活動の際に、面接で退職理由や退職の経緯を説明しづらいと感じる可能性も否定できません。
親に退職代行の利用を話したところ、「社会人としてどうなのか」と反対されてしまうケース。あるいは、次の職場の面接で退職理由を深く聞かれ、退職代行を使ったことを正直に話すべきか悩んでしまう、といった状況です。
デメリット⑦:自分に本当に合ったサービスか見極めが難しい
退職代行サービスは、運営元(民間企業、労働組合、弁護士法人)によって行える業務範囲や料金、得意とするケースが大きく異なります。また、サービス内容も多岐にわたるため、数多くの選択肢の中から、自分の状況や目的に本当に合ったサービスを見極めるのは、知識がないと非常に難しい作業です。
単に退職の意思を伝えてほしいだけなのに、高額な弁護士プランに誘導されてしまうケース。逆に、未払い残業代の請求など法的な交渉が必要なのに、交渉権のない民間企業のサービスを選んでしまい、結局何も解決しなかった、というミスマッチが生じるケースです。
後悔しないために!退職代行のデメリットへの7つの注意点と対策
退職代行サービスは、上手に活用すれば非常に頼りになる存在ですが、デメリットを理解せず安易に利用すると後悔につながることもあります。しかし、事前にポイントを押さえて対策を講じることで、これらのデメリットは最小限に抑えることが可能です。
ここでは、後悔しないために実践したい7つの具体的な注意点と対策を【看護師向けチェックリスト】として解説します。

対策①:【費用】複数の業者を比較し、料金体系とサービス内容を徹底確認
まず前提として、退職代行サービスの費用は決して安くありません。料金トラブルを避けるためには、複数の業者から見積もりを取り、総額費用を比較検討しましょう。
「基本料金」だけでなく、どのような場合に「追加料金」が発生するのか(例:連絡回数、深夜早朝対応、書類作成など)、その具体的な金額はいくらか、契約前に必ず書面で確認してください。また、「退職できなかった場合の返金保証」の有無とその適用条件も重要なチェックポイントです。
特に看護師さんの場合、不規則な勤務時間や複雑な雇用条件が多いため、サービス内容と料金が見合っているか、細部までしっかり確認することが大切です。
対策②:【業者選び】運営元(民間・労働組合・弁護士)と実績・口コミを入念に調査
デメリット②で挙げた「悪質な業者」や、デメリット⑦の「ミスマッチ」を避けるためには、業者の信頼性と実績の見極めが不可欠です。
まず、運営元が「民間企業」「労働組合」「弁護士法人」のどれであるかを確認し、自分の目的に合った業者を選びましょう。
特に、未払い賃金の請求や有給消化の「交渉」を希望する場合、民間企業では対応できず(非弁行為のリスクあり)、労働組合か弁護士法人を選ぶ必要があります。 また、業者の公式サイトの情報だけでなく、SNSや口コミサイト、第三者の比較サイトなど、多角的な情報源から実績や評判を調査しましょう。
ただし、口コミの中には不自然なもの(サクラや悪質な誹謗中傷)も混じっている可能性があるため、情報の取捨選択は慎重に行ってください。
対策③:【人間関係】退職後の関係性も考慮し、必要なら自分で伝える努力も検討
どうしても円満退職を望むなら、代行業者に依頼する内容・伝え方を工夫しましょう。
退職代行サービスを利用すると、職場との関係が悪化する可能性があることはデメリットの一つです。もし、あなたが「できる限り円満に退職したい」「お世話になった人には直接感謝を伝えたい」と強く願うのであれば、全てを代行業者に丸投げするのではなく、一部自分で対応することも検討しましょう。
例えば、正式な退職通知は業者に任せつつ、特にお世話になった上司や同僚には、後日、手紙やメールで感謝の気持ちを伝えるといった方法です。 また、代行業者に依頼する際も、会社への伝え方について「高圧的にならないように」「感謝の意も伝えてほしい」など、希望を伝えることで、多少なりとも印象を和らげることができるかもしれません。
対策④:【退職条件】希望条件は明確に伝え、実現可能性を事前に確認
譲れない点と妥協できる点を整理し、業者の交渉範囲を理解しましょう。
「希望通りの条件で退職できない」というデメリットを避けるためには、まずあなた自身が「何を一番優先したいのか」「どこまでなら妥協できるのか」を明確にしておくことが重要です。
退職希望日、有給休暇の消化日数、会社への返却物、受け取りたい書類などをリストアップし、業者との無料相談の際に具体的に伝えましょう。
その上で、選んだ業者(特に運営元)がどこまでの交渉に対応できるのか、あなたの希望条件が法的に・実務的に実現可能そうか、正直な見通しを確認してください。実現不可能な期待を持つと後で「話が違う」ということになりかねません。
対策⑤:【退職後】必要書類や手続きについて、事前に業者と確認・準備
業者のサポート範囲を確認し、自分でやるべきことをリストアップしましょう。
退職代行サービスは、主に「退職の意思を伝え、退職を成立させる」までをサポート範囲としている場合が多いです。そのため、退職後の離職票や源泉徴収票、年金手帳といった重要書類の受け取り、健康保険や年金の切り替え手続き、貸与物の返却などで、どこまで業者が関与してくれるのか、事前に明確にしておく必要があります。
業者のサポート範囲外の手続きについては、あなた自身が会社とやり取りをする必要があるのか、その場合の注意点などを確認し、事前に準備を進めておきましょう。スムーズな退職後の生活移行のために、この確認は非常に大切です。
対策⑥:【精神面】なぜ代行を使うのか自分の状況を整理し、割り切ることも大切
罪悪感より自分の心身の健康を優先しましょう。
退職代行サービスを利用することに対して、「後ろめたい」「逃げているようで罪悪感がある」と感じる方もいるかもしれません。しかし、ハラスメントが横行している、精神的に追い詰められている、どうしても直接言い出せない、といった状況では、あなたの心身の健康を守ることが最優先です。
なぜ退職代行を使おうと思ったのか、自分の状況や気持ちを整理し、「これは自分を守るための正当な権利だ」と割り切ることも時には必要です。周囲の目や一般的な常識にとらわれすぎず、あなた自身にとって最善の選択をすることを心がけましょう。
対策⑦:【ミスマッチ防止】無料相談を活用し、疑問点を全て解消してから契約
自分の目的(意思伝達のみか、交渉も必要か)を明確にしましょう。
デメリット⑦の「自分に本当に合ったサービスか見極めが難しい」という点を克服するためには、無料相談の活用が鍵となります。契約する前に、複数の業者の無料相談を利用し、あなたの状況や希望(単に退職の意思を伝えてほしいだけなのか、有給消化や未払い賃金の交渉もしてほしいのか等)を具体的に伝えましょう。
その上で、各業者のサービス内容、料金体系、運営元の特徴(民間・労働組合・弁護士)、過去の実績などを詳しく聞き、疑問点や不安な点を全て解消してください。複数の業者を比較検討することで、最もあなたのニーズに合致し、信頼できるサービスを見つけ出すことができるはずです。
デメリットを理解した上で、それでも退職代行が有効なケースとは?
これまで退職代行サービスの様々なデメリットと、それらへの対策について解説してきました。費用がかかること、悪質な業者のリスク、職場との関係悪化の可能性など、確かに無視できない点があります。
しかし、これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じた上でなお、退職代行サービスの利用が非常に有効、むしろ積極的に検討すべきケースも存在します。
それは、デメリットを上回るメリットが期待できる、以下のような状況です。
職場で日常的に上司や同僚から精神的・肉体的な苦痛を伴うハラスメントを受けており、心身ともに限界を感じている場合、もはや自分で退職を申し出る気力すら残っていないかもしれません。
このような状況では、安全かつ確実に職場から離れることが最優先です。退職代行サービス(特に弁護士や労働組合運営のもの)を利用することで、加害者や会社と直接顔を合わせることなく退職手続きを進められ、場合によってはハラスメントに対する慰謝料請求などの法的措置も検討できます。
過重労働や職場の人間関係、プレッシャーなどにより、うつ状態や適応障害といった精神的な不調を抱え、正常な判断や行動が難しい状況にある場合も、退職代行は有効な手段です。
無理に自分で退職を伝えようとすることで、さらに症状が悪化する可能性も考えられます。専門業者に依頼することで、精神的な負担を最小限に抑え、まずは心身の回復に専念するための時間を確保できます。
「辞めるなら損害賠償を請求するぞ」「後任が見つかるまで絶対に辞めさせない」といったように、会社側が非常に威圧的な態度で退職を認めようとしない、あるいは過去にそういった事例があった場合、個人で交渉するのは非常に困難です。
このようなケースでは、退職代行サービス(特に交渉力のある労働組合や弁護士)が間に入ることで、法的な観点から冷静かつ対等な話し合いのテーブルにつき、あなたの正当な退職の権利を主張してくれます。
「もう一日もあの職場には行きたくない」「明日から出社することを考えると眠れない」というほど追い詰められている場合、退職代行サービスは即日での退職(実質的に翌日から出社しない形での退職)をサポートしてくれます。
民法上は2週間前の申し出が原則ですが、会社との合意が得られれば即日退職も可能ですし、それが難しい場合でも、有給休暇の利用や欠勤扱いで実質的に出社を回避する方法を提案・実行してくれます。
これらのケースでは、費用や関係悪化といったデメリットよりも、あなた自身の心身の安全や健康、そして「確実に辞められる」というメリットの方がはるかに大きいと言えるでしょう。
退職代行のデメリットを正しく理解し、賢い選択を
退職代行サービスは、困難な状況にある方々にとって、退職という大きな壁を乗り越えるための有効な手段の一つです。しかし、本記事で見てきたように、決して万能ではなく、いくつかのデメリットや注意点が存在することも事実です。大切なのは、メリットとデメリットをしっかりと天秤にかけ、ご自身の状況と照らし合わせて冷静に判断することです。
後悔しない退職代行サービスの利用のためには、何よりも事前の情報収集と慎重な業者選びが最大の鍵となります。運営元はどこか、料金体系は明確か、過去の実績や口コミはどうか、そして自分の希望するサポート(意思伝達のみか、交渉も必要かなど)を提供してくれるのか。
これらの点を客観的に見極め、本当に退職代行サービスが必要なのか、どのサービスが自分にとって最適なのかをじっくりと考える時間を持つようにしましょう。
Wrote this article この記事を書いた人

あゆ
元ナース・保健師のあゆ。 元看護師・保健師で、転職5回を経て現在はフリーランスとして活動中! 看護師として働く中で、悩み続けて1年かけて退職した経験があります。その過程で、退職を切り出す難しさや、退職後のキャリアへの不安を痛感しました。 『ナースの退職お悩み相談室』では、退職を考える看護師の方々に役立つ情報や、退職代行サービスの活用法、退職後のキャリアプランなどを発信しています。皆さんが一歩踏み出すお手伝いができれば嬉しいです。